史学会大会について
史学会大会は、学会設立から10 年後の1899 年(明治32 年)に第1 回が開かれ、以降、関東大震災や第二次世界大戦、東大紛争による中止をのぞき、毎年1 回開催されてきました。
初期の大会は、午後から夜にかけて講演および懇親の会を行うかたちで催されましたが、大正期に入ると、欧米の「全国史学者大会」にならい、内容が刷新、規模が拡大され、2~3 日間にわたり講演、懇親会、協議会などが行われるようになりました。1913 年(大正2 年)に開催された第15 回大会の内容をみますと、1 日目には史料・参考品の展示会、午後は箕作元八氏による公開講演が行われ、2 日目には前田侯爵家什宝展覧、午後には総会・晩餐会、そして3 日目には逓信省博物館・海軍参考館の観覧が実施されています。
この後しばらく、公開講演、名家の什宝展覧を行うことが毎年の大会の慣例となりました。翌年の第16 回大会では、初めて国史・東洋史・西洋史の3 部会が開かれ、この部会発表は現在にいたるまで継続されています。
戦後、大会は終戦翌年から再開され、公開講演と部会発表を主とし、併せて総会、懇親会を行う形式が定着しました。会期中、関連史料の展覧を東京大学史料編纂所や東洋文庫などで行う、博物館や美術館の企画展示の観覧の便宜をはかる、などの企画も実施されました。
そして2002 年(平成14 年)には記念すべき100 回目をむかえ、「歴史学の最前線」と題する国際シンポジウムを開催しました。近年の大会は、1 日目にシンポジウムと総会、懇親会、2 日目に各部会での研究発表や小シンポジウムを行う形式をとり、会員以外の方々にも公開し、大勢の参加者にご参加いただいています。また、過去のシンポジウムの成果は、単行本として刊行されています。
第122 回大会情報
本年の史学会大会は、11月9日(土)、10日(日)に開催いたします。1日目は公開シンポジウム、2日目には日本史、東洋史、西洋史の各部会をおこないます。事前申込制による対面方式で実施する予定です。以下より参加申し込み・参加費のお支払いをお願いいたします。本システムでのお申し込みができない場合は、shigakukai.taikai■gmail.com(■を@に変えてください)へご連絡ください。
参加者には、大会プログラム・参加証を郵送いたします。なお、プログラム発送後は参加費の返金はいたしかねます。ご了承くださいますようお願いいたします。
*参加申込はこちら(申込期間:10月18日~11月1日)
【1日目】 ≪公開シンポジウム「障害者と歴史学」≫
日時 |
2024年11月9日(土)午後1時~5時 |
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会場 |
東京大学文学部 法文2号館1番大教室 |
障害者は歴史上どこにでもいる人々である。だが、歴史研究において彼らの姿が常にわれわれの目にとまるとは必ずしもいえない。その理由は、第一に、障害者は往々にして隔離され、視線を逸らされることによって、周縁化されてきたからであろう。第二に、障害者自身が不利な境遇におかれ、しばしば表現能力にハンディを抱えるために、その意志をおおやけにする機会を制限されてきたからであろう。この二つの理由から、われわれ研究者は総体としては、障害者を歴史学においてどのように取り上げることができるのかについて、十分な議論を重ねてきたとはいえないように思われる。
しかし、障害者がどこにでもいるということ自体からいって、歴史研究において彼らに割かれる関心はより大きくてもよいはずである。論ずべきことは多い。歴史上、障害者のおかれた立場には、社会規範、家族、医療、市民運動、国家による身体の管理など、多様な事項が関係してきた。どういう人が「障害者」に区分けされるのかということ自体が、これらの事項と深く絡み合った歴史的産物である。したがって、「障害者と歴史学」というテーマは領域横断的な議論との親和性が高いといえよう。また、障害者のあり方について考えることは、歴史(学)上の「主体」についての理解を深めるためにも大きな意味をもつ。自己表現に制約をもつ人々が、自分の力で、また周囲の人々とともに歴史の中を生きてきた、その姿に向き合うことは人文学としての歴史学の課題であろう。
幸いなことに、歴史学における近年の方法論上の深化も反映しつつ、個々の研究者はすでに自身の仕事において障害者の姿に向き合ってきた。最近の動きだけを紹介すると、2020年3月には日本近世史の高野信治を中心として『障害史研究』(九州大学大学院比較社会文化研究院)が創刊され、現在まで6冊が刊行された。各号、主に日本史・日本文化史における障害(者)について、数点の論文が掲載されている。同年12月には『障害学研究』誌で「障害の歴史」特集が組まれ、中野智世が20世紀前半ドイツの身体障害者の自助運動、大谷誠が第二次世界大戦後のイギリスにおける知的障害児親の会、藤原哲也が第二次大戦後アメリカの戦傷病者の社会復帰支援、鈴木晃仁が昭和戦前期の脳病院の女性患者について、充実した論文を寄せた。2021年には北村陽子『戦争障害者の社会史――20世紀ドイツの経験と福祉国家』(名古屋大学出版会)が刊行された。
彼らをはじめとする研究者から協力を得ることによって、「障害者と歴史学」をめぐる現況の一端を理解し、幅広い地域・時代について豊かな議論を行なうことができるだろう。歴史の中の障害者の姿にあらためて向き合うことは、現在に対するわれわれのまなざしをより深めることにもつながるのではないだろうか。
趣旨説明
池田嘉郎(東京大学)
報告
1.北村陽子(東京大学)
2.高野信治(九州大学名誉教授)
3.大谷誠 (同志社大学)
コメント
小浜正子(日本大学)
中野智世(成城大学)
【2日目】 各部会
10:00~ |
日本史 古代史部会 |
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1 楊 丹丹 | 東アジアにおける玄蕃寮の成立――南朝起源説の再検討―― | |
2 横井 裕人 | 平安初期の陰陽寮に関する試論――嵯峨太上天皇の「遺詔」と卜占をめぐって―― | |
3 堀井佳代子 | 『年中行事』の基礎的検討――行事の項目を中心に―― | |
4 阿部 栞央 | 平安時代における皇親出家と処遇の転換期に関する一考察 | |
13:30~ |
日本史 中世史部会 |
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1 George Wollaston | 鎌倉期春日社の社司集会 | |
2 羽田 友生 | 南北朝期安芸国における国人と守護 | |
3 李 淳楠 | 室町期東寺文化圏における表象と実態――賭博する「付喪神」像を生み出す都市空間―― | |
4 山口 啄実 | 中世後期の禅宗における祖師遠忌について | |
13:30~ |
日本史 近世史部会 |
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1 川路 祥隆 | 初期幕藩関係にみる「役」と「奉公」――公儀普請を事例に―― | |
2 堀 智博 | 慶長・元和期における大坂落人対策 | |
3 増田 琴子 | 享保元年御林吟味の意義――幕府領山間地域を対象として―― | |
4 久保堅大朗 | 江戸近郊「抱屋敷」政策の再検討 | |
13:00~ |
日本史 近現代史部会 |
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1 劉 奕賢 | 明治初期の下意上達の実態――東京再幸中止請願を例として―― | |
2 王 潔琳 | 明治初期における博覧会政策と民間出品者――出品資金の貸与を中心に―― | |
3 田中 佑 | 初期議会期における枢密院と条約改正問題 | |
4 進藤悠佳理 | 日本陸軍の主要人事と学歴の関係性――陸軍大学卒業生のキャリアパスに関する基礎的研究―― | |
5 大薗 佳純 | 1920年代日本の総力戦体制構想と陸軍経理組織――食糧問題への対応を中心に―― | |
6 角 英里華 | 戦時下の地方文化団体――会津文化協会を中心として―― | |
10:00~ |
東洋史部会 |
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1 佐川 英治 | 北魏の「子貴母死」と「皇后無子」――古代末期の婚姻の機能をめぐって―― | |
2 朱 智立 | 唐初期の漠北支配について | |
3 彦山 明志 | 漢人世侯と投下領主の消長――モンゴル帝国期の済寧路を例に―― | |
4 賈 亦実 | 元代文化史における色目人の貢献――薩都剌を中心に―― | |
5 李 子鵬 | 明代中前期における銭禁政策と私鋳銭の関係性――貨幣構造の転換期の銭鈔政策について―― | |
6 劉 明鍇 | 南明初期の海外貿易政策と対日通商 | |
7 林 暁萍 | 「分」と「合」の狭間――孫袁と民国初期による「聯日」外交の試み(1912-1915年)―― | |
8 宮脇 雄太 | 第一次世界大戦後の国際交通諸条約形成をめぐる北京政府外交 | |
9 何 文琳 | 文明批判の可能性――第一世界大戦後の中国アナキズムと暴力―― | |
10:00~ |
西洋史部会 |
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1 胡 昶旭 | 6世紀中葉の東ローマ帝国における聖職者追放――追放先としてのエジプトに着目して―― | |
2 横川 大輔 | 1356年に皇帝カール四世は神聖ローマ帝国の改革を目指したのか――政治コミュニケーション史からの再検討―― | |
3 楠田 悠貴 | フランス革命期・ナポレオン統治期にイギリス革命史を読む、書く | |
4 中山 俊 | 七月王政期における宗教的記念物の管理とカトリック――用途と信心の観点からの考察―― | |
5 吉田眞生子 | 「国民」と言語をめぐるフィンランド知識人の議論と1869年議会法 | |
6 中川 翼 | ブリテン帝国および君主をめぐる戦間期アイルランドの国制論争 |
過去の大会情報
第121 回(2023 年) |
公開シンポジウム「土地所有の世界史」ほか |
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第120 回(2022 年) |
公開シンポジウム「君主号と歴史世界」ほか |
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第119 回(2021 年) |
公開シンポジウム「世界主義の諸様相――コスモポリタニズム・ |
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第118 回(2020 年) |
各部会報告 |
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第117 回(2019 年) |
公開シンポジウム「天皇像の歴史を考える」ほか |
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第116 回(2018 年) |
公開シンポジウム 「「奴隷」と隷属の世界史」ほか |
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第115 回(2017 年) |
公開シンポジウム「ロシア革命と20世紀」ほか |
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第114 回(2016 年) |
公開シンポジウム「水中遺跡の歴史学」ほか |
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第113 回(2015 年) |
公開シンポジウム「歴史空間学の可能性」ほか |
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第112 回(2014 年) |
公開シンポジウム「近代における戦争と災害・環境」ほか |
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第111 回(2013 年) |
公開シンポジウム「帝国とその周辺」ほか |
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第110 回(2012 年) |
公開シンポジウム「エスニシティと歴史学」ほか |
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第109 回(2011 年) |
公開シンポジウム「歴史のなかの公と私」ほか |
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第108 回(2010 年) |
公開シンポジウム「越境する歴史学と歴史認識」ほか |
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第107 回(2009 年) |
公開シンポジウム「環境と歴史学」ほか |
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第106 回(2008 年) |
公開シンポジウム「信仰における他者――異宗教・異宗派の受容 と排除の比較史論――」ほか |
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第105 回(2007 年) |
公開シンポジウム「琉球からみた世界史」ほか |
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第104 回(2006 年) |
公開シンポジウム「国民国家という問題――歴史の重みとどう向 き合うか」ほか |
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第103 回(2005 年) |
公開シンポジウム「18 世紀の秩序問題」ほか |
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第102 回(2004 年) |
公開シンポジウム「世界遺産と歴史学」ほか |
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第101 回(2003 年) |
公開シンポジウム「第一次大戦と世界」ほか |
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第100 回(2002 年) |
記念シンポジウム「歴史学の最前線」 |
例会
1 年に1 回開催される大会のほか、不定期で例会が開催されることがあります。
大会とおなじく、どなたでもご参加いただけます。
過去の開催例
2024 年 3 月15 日開催 |
「近現代西洋における領域の帰属とレファレンダム」
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2022 年 9 月25 日開催 |
「E・H・カー『歴史とは何か』を再読する」 司会 勝田俊輔 報告 1.成田龍一(日本女子大学名誉教授) 2.加藤陽子(東京大学) 3.小山哲 (京都大学) 4.吉澤誠一郎(東京大学) レスポンデント 近藤和彦(東京大学名誉教授) |
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2015 年 9 月5 日開催 |
「古代東国の地方官衙と寺院」
趣旨説明 古代東国の地方官衙と寺院 佐藤 信(東京大学) |
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2007 年 5 月19 日開催 |
「17 世紀イギリスの3 王国と宗教」 |
報告者:金仲洛/コメンテータ:富田理恵 |
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2004 年 6 月12 日開催 |
「18 世紀イングランドの公共圏におけるスキャンダルと政治」 |
報告者:ジョン・ブルーア |
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2003 年 1 月9 日開催 |
「学海を泳ぐ」 |
報告者:五味文彦 |
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2002 年12 月12 日開催 |
「知の武士(もののふ)」 |
報告者:木村靖二 |